薬(毒)

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眠る前、暗がりのなかで、錠剤を数える 一つ二つ三つ…いったいいくつ飲めば私は、 安らかに眠れるのだろう こんな生活が始まったのは、かれこれ 15年前からだ。 最初は、眠りが浅くなったなと、それくらいにしか 思っていなかった。 だが、心の中では何かが壊れ始めていた、 過去の失恋、母親との葛藤、仕事場での人間関係 そんなことが積み重なって、ついに 精神を病むという事態が起きてしまったのだ。 そんな私にも出逢いがあり、告白をしてくれた 竹志という存在がある。 正直、本当に私なんかで良いのか?不思議なくらい だけど、彼はとても優しく、病を理解してくれようと必死になってくれ、なんとか恋人同士という 情態を保てている。 デートはもっぱら、漫画喫茶だ。 フリードリンクを選び、彼は漫画を、私は女性雑誌 を何冊か選び決められた番号の部屋に行く。 私は病のせいか、漫画が読めなくなっており 写真で見れる女性雑誌を自然と選んでしまうのであろう。 店内は流行りの音楽が流れ、私達はそれぞれ 持ち込んだ漫画、女性雑誌に目を通していく、 そうしていると、いつものように彼が、キスを ねだってくる、この密室は想い合う二人を そういう行為へと駆り立てるのであろう。 いつの間にか漫画と女性雑誌はどうでもよくなっていた。 なんて幸せなんだ!薬(毒)に犯されているわたしを こんなにもいとおしく優しく包んでくれる彼 失いたくないという思いをはせながら 気づくと漫画喫茶を出る時間が迫っていた。 漫画喫茶を出てから、夕食の時間が近づいたので 彼と何処で夕食をとるか話していた そんなとき、急に心臓がバクバクとうち始め 私の心が乱れ始めるのを感じた、まただ! また薬(毒)を飲まなくてはならない 本当は夕食後に飲むはずだった薬(毒)を急遽 飲むことにした。彼も動揺を隠せない、当たり前だ 彼は健康なんだから、どんなに理解してくれようと しても、理解できる訳がない、彼を責めている訳ではない、これが現実なのだ でも、彼のおかげで薬(毒)の量が減ってきている。 彼の優しさという薬(毒)愛情という薬(毒)が 効いているのであろう いつか、その彼の愛情と言う薬(毒)で安らかに眠れる日がくることを祈りながら、その愛情という薬(毒)に苦しめられる事になるかもしれないと 悟るように家路へと向かうのであった。
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