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彼女がこの城に来て7日後。
「挨拶が遅れて悪かったな」
「そ、そんなっ」
王は突然彼女の部屋に現れた。
もう、自分のことなど忘れてしまってると思って安心していたのに――。
「フィランディア姫、ここの生活にはなれましたか?」
「は、はいっ」
王を見るのは初めてだ。けれど彼女にも彼が王だとわかるほど、彼にはオーラ(威圧感)があった。
まぶしいほどの金色の髪はまるで王者の冠、鋭い瞳はエメラルドでなんでも見透かされてしまいそうでフィンは体を震わせた。
「欲しいものはなんでも用意させよう。不自由はないか?」
「は――、あ」
「なんだ?」
少し、低い声で王にそう言われフィンは頭を下げ「な、何でも」と答えた。
「言いたいことは言え。隠し事をされるのは好きじゃない」
「い、いえっ、隠し事だなんてっ」
王に頼みたいことは別であったけれど、自分の秘密がバレてしまっては困る。
だから、ただひたすら静かに過ごそう。
そうすればきっといつか――。
「言え」
「――っ」
カツンとタイルを鳴らし王が一歩フィンに近づく。
そのオーラに押されてフィンは一歩下がった。
――怖い。
身体は素直で、フィンの体はガタガタと震える。
「私には言えないのか?」
「そ、そうではっ」
「ならば、言え」
「――っ、あ、あのっ」
背中を冷たいものが走る。
かみ合わない奥歯をぐっとかみしめて――。
「お、お庭を散歩させてくださいっ」
やっと、フィンは一つのお願いごとを王にした。
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