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ここは大国シルヴァーナ国。
今日、ここに一人の少女が側室に入った。
名前はフィランディア。
隣国ランブリア国の第7王女だ。
ランブリアもシルヴァーナほどではないものの、かなりの武力を有した国である。
数年前からこの二つの国境沿いでは小さな小競り合いが絶えなかった。
そう、彼女は友好の証として側室に入るのだ。
馬車が城門の前で止まる。
従者によって開けられるドアからさして白くもない足が見えた。
カツン。
石畳をヒールが打つ。
ふわりと広がるドレスはまるで嫁入りしたかのように真っ白。
けれどその少女の顔に笑みはなかった。
「ここが、シルヴァーナ……」
か細い声でフィンはそうつぶやいた。
「ようこそ、フィランディア姫。お初にお目にかかります。私はこの国の宰相コール・バルマンと申します」
迎えに来た男が恭しく頭を下げる
年は30代半ばくらいだろうか。
銀色の髪に丸メガネだがその容姿は整いすぎるほど整っていた。
「こちらこそ、わざわざ出迎えありがとうございます」
その彼にフィンはそういって同じように頭を下げた。
「姫君ともあろう方が臣下に頭を下げてはなりません。顔をお上げください」
「臣下だなんて……、わたしは――」
そこまで言いかけて彼女は口をつぐんだ。
彼女自身理解しているのだ。自分が人質であるということに。
「せっかく今日がお輿入りの日だというのに申し訳ありません。王は外せない用がありまして」
「そんな、お気遣いなく。輿入れといっても……」
「いえ、王より手厚く出迎えろと言われております。長旅お疲れになったでしょう?どうぞこちらへ、お部屋も用意しておりますから」
コールの声にフィンはこくりと頷いた。
けれどすべて分かっていた。
王はフィンに興味はない。
それはこの出迎えだけでもわかる。
コールと数人の従者、そしてその後ろには数十人の騎士。
彼女は今から自分が監禁されることを覚悟した。
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