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「お目覚めですか」
「………何だ、お前か」
美青年が、僕の視界に現れる。
死後の世界は遠ざかる。
生きている今は、重くて気持ち悪い。
「申し訳ございません、午睡(うたたね)の邪魔をする積もりでは」
「僕は魘(うな)されていたのかい?」
「そのようにお見受け致しましたが」
「そうだったのか。お前がそう言うのなら、そうだったんだろうな」
汗だくで目を覚ます。
僕は眠い目を擦りながら、身体を伸ばした。
ミサキの身体がべきべきと音を立てる。
この身体はガタが出やすい。
無理をして継ぎ接(は)ぎした肉体は、とても脆い。
メンテナンスが重要なのに、麒麟はそこのところ、たまに抜けている。
そういう時だけは、僕が出て来なければならなかった。
「申し訳ございません………マッサージの腕が落ちましたか」
「黙れ、札幌。向こうを見ろ。僕は服を着る」
「御意」
タオルを巻いただけの身なりを整え、下着を履く。
後ろ向きの北極星札幌から受け取った女子制服を着ていった。
「あれから、山鳥に付きっきりだったからな。
札幌。お前の腕は下がるどころか、上がっているぞ」
「光栄の至りです」
「そうかい」
ここ暫くの付き合いで、だんだんと分かって来た。
北極星札幌はそういう性癖なのだ。
女の下僕となった自分自身に興奮するタイプ。
「こっちは冷めるだけなんだがな」
「何か?」
「うるさい。反応しろなんて頼んでいない」
「御意」
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