隣の家の魔王

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 真央兄ちゃんが嫌いか?  いきなり拉致だの魔王だのわけわからないことになったけど……。 「……嫌いじゃない」  真央兄ちゃんはいつも優しくしてくれた。  いきなり嫌いになれるわけがない。 「……じゃあ魔王が嫌か?」  魔王、と言われても……。 「魔王はよく知らないから分からない。嫌いでも好きでもない」  今だって真央兄ちゃんが魔王というのにしっくりきていない。  真央兄ちゃんは真央兄ちゃんなんだもん。 「俺以外に……」  真央兄ちゃんは急に黙った。 「何?」 「……やっぱり俺以外に好きなやつが出来たのか」 「はあ?」  何だそりゃ。 「やっぱりって何さ。好きな人なんていないけど」  いきなり何だ。  真央兄ちゃん以外に好きなやつなんて出来ていない。 「言っていただろ。告白されたって……。そいつと付き合うんだろ?」 「はああ?」  確かに告白された話はした。  なんせ拉致られる直前に話してたのがそれだからね。  よく覚えてるよ。  でも付き合うなんて一言も言ってない! 「俺と結婚するって言っていたのに、お前は俺の知らない学校の男と付き合うんだよな。俺に期待させておいて、誰か他のやつのものになっちゃうんだよな……」  真央兄ちゃんのトーンがどんどん下がっていく。 「いやいやいや! ちょっと待ってよ! 私は告白してきた人と付き合わないよ? もう断ってるし」 「え?」  真央兄ちゃんがそっと振り向いた。  上目遣いでこちらを見てくる。  なにこれ可愛い。
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