Kill(着る)

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○百貨店・『アベル・ジロドゥ』店内    羽衣、棚に並んだセーターを畳んで揃えている。 羽衣の声「霧生君、同僚が死んでショックで会社辞めたのかな。同僚ってもしかして女の子……?彼女……?」    もやもやとセーターを畳む。 別布「鴨沢!」 羽衣「はい!」 別布「霧生君に倉庫の場所教えてあげて」 ○同・倉庫    百貨店の一角にある倉庫。薄暗い体育館のような空間に、所狭しとハン    ガーラックが並び高級婦人服がかけられている。洋服の迷路のような空    間。    大きな扉が開いて、羽衣と霧生が入って来る。 羽衣「ここがストック倉庫。入荷した洋服や、修理した洋服をここに保管してお くの」    羽衣、ハンガーラックの一角で立ち止まる。 羽衣「ここがアベル・ジロドゥの保管スペース」    ハンガーラックにかけられた洋服には一枚一枚ビニールが掛けられてい    る。いくつかの洋服には肩の所に、客の氏名を書いた紙が貼ってある。 羽衣「お修理に出した洋服やお取り置きの洋服には、紙に名前を書いて肩の所に 貼っておくの」 霧生「すごいね。天井まで吊ってあるんだ」    霧生、天井を見上げる。ハンガーラックは二段になっていて、天井まで    びっしりと洋服が掛けられてある。 羽衣「上の段の服は梯子に上って取るんだ」    霧生、感心したように見上げている。羽衣、ポーッと霧生の横顔を見てい   るが、ハッとして、 羽衣「あ!別布さんに伝票持って行ってって言われてたの忘れてた!先に戻る  ね」 霧生「ありがとう」    羽衣、「また怒られる」と呟きながら走って出て行く。    霧生、吊られた洋服をじっと見ている。肩の所に『牟田てい子様』と書か   れた紙が貼ってあるスカートを見る。 霧生「まずは、ターゲットに近づかなくては」    霧生、ビニールを外す。ポケットから待ち針を取り出し、牟田のスカート   の裏地に刺す。
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