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その様子を見届けると、満は静かに息を吐いた。
すべて終わったのだ。
窓を叩く音は止んでいる。
後ろから、正樹の声が聞こえてきた。
「死んだのか?」
「もう大丈夫。心臓代わりの左目を射抜いたから。……でも、気になることがある」
満はアーチェリーの弓を床に置きながら言うと、カズマの元へ向かうため、その場から歩き出した。
やがて、床に倒れているカズマの目の前にたどり着く。
「最後の手紙があるはずなんだ」
そう言いながら、満は視線を落とした。
まずは左手を見る。
その手には、スーパーボールが強く握りしめられていた。
まるで、大切なものを絶対に落としたくないかのようだ。
一方で、彼がさっきまで右手に持っていた短刀は、床に落ちていた。
続いて、上体を見る。
羽織と着物の間に、白い紙束が見えた。
「おい、あるじゃん。それが手紙だろ?」
後ろにいる正樹が、やや興奮した口調で言った。
「やっぱりあった……」
満は、手紙を拾い上げた。
そして、それを両手で広げる。
手紙はやや土で汚れていて、字は赤く、おそらくカズマが自らの血を使って書いたのだろう。
この手紙を読めば、祖父に殺された後の彼に、一体何が起こったのかがすべてわかるはずだ。
「これで、すべてがわかる」
満はそう言うと、手紙に目を通した。
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