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私は目を開けることができた。
なぜ私は生きているのだろうか。
確か祖父によって、喉をかき切られて殺されたはずだ。
大きな疑問があったが、とりあえず、辺りを見回してみることにした。
真っ暗な夜。
遠くをはっきりと見ることはできない。
状況を確認するため目を凝らすと、ぼんやりとだが、いくつもの墓石、五輪塔、卒塔婆が見えたような気がした。
ここは墓場だろうか。
記憶が定かではなかった。
だが今はそんなことよりも、左目に違和感があるのが気になった。
明らかに何かがおかしい。
不安を感じながらも、右手で顔を触ってみた。
右眼窩に右目はなかったが、左眼窩には左目があった。
確か、祖父に両目を抉られたような気がしたが、どういうことだろうか。
なぜ左目があるのだろうかと、不思議に思った。
それに、他にも疑問がある。
ひもがない羽織、着物、襦袢、袴、足袋、草履……。
着ているものはすべて、黒いものになっていた。
両手は青白く、髪は一つ結びになっているのがわかる。
一体どういうことだろうか。
誰かが羽織のひもを切り取って、髪を結んだのだろうか。
だがその時、重たい視線を感じた。
さっきまでいなかった者が、目の前にいるような感じがした。
あまりにも異様な気配だ。
どういうことなのだろうか。
地面に両ひざをついている私は、恐れながらもゆっくりと顔を上げた。
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