244人が本棚に入れています
本棚に追加
「だが、それには時間がかかる。山の中に、特異な能力を持つ仲間が待っているが、まだ少数だ。それに私は、これから長き眠りにつかなければならない」
私は思い出した。
不死の存在になった者は、長き眠りにつかなければならないことを。
彼は話を続けた。
「ある程度活動すると、必ず激しい眠気に襲われる。それは不死身になった副作用だ。お前もやがてそうなるだろう。数か月から数年、または、百年以上眠ることもある。それ以外にも、記憶障害が起きたり、五感も過敏になる」
そこまで言うと、景政公は懐から一本の短刀を取り出す。
「切れ味が鋭く、永遠にさびることのない短刀だ。これを武器にしろ」
そう言いながら、その短刀を私に与えた。
右手に持った一本の短刀。
無力で無能な私が、唯一手に入れた力強い武器。
それに、景政公の左目をはめられたことによって、不死身になることができた。
副作用はあるが、体は腐ることなく、死ぬこともない。
私は短刀から目を離して顔を上げると、彼に礼を言った。
「再び、お前と会える時が来るのを楽しみにしている」
景政公は、そばにいる右目がない馬に乗った。
馬がいなないた。
「お前は、私の息子だ」
景政公は低い声で言うと、馬を走らせ、墓場から立ち去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!