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前方からだ。
言い争っている雰囲気が、遠くからでも伝わってくる。
何をやっているのだろうか。
男は、前方をじっと見た。
磯浜に、若い男女がいるのが確認できる。
男が着ている物は、黒で統一されている。
女は男に胸倉をつかまれていて、悲鳴を上げている。
喧嘩だろうか。
それとも、殺そうとしているのだろうか。
どちらにせよ、女に手を出す醜い男が磯浜にいるのだ。
生かしてはおけない。
手始めに、あの男を殺すことにしよう。
男は水面から、静かに右手を出した。
青白い手には、一本の短刀が握られている。
唯一の武器だ。
これで男を殺していこう。
不安な気持ちもある。
誰にも捕まることなく、殺戮を続けていくことができるかどうかだ。
だが、大丈夫なはずだ。
何かあれば、川や海に深く潜ればいい。
今はただ、男の右目を抉り取ることに専念するとしよう。
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