第一章・ーきえてくー

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「いないよ。てか、怖い事言うなよ。怖いだろ」 「ははっ。別に驚かせたい訳じゃねぇってば」  二人連れの男だ。  上手く隠れたつもりだったのだが、少し見られてしまったのだろうか?  気配を悟られそうになったら嫌なので、二人には早いとこ帰って欲しいのだが……。 「……掛け軸は普通だな」 「あれ? お前知らねーの? この幽霊屋敷で怖いのは掛け軸じゃねーよ。掛け軸の前に立つ、男の幽霊の方」  ……何だと……? 掛け軸の前に立つ男の幽霊……? ずっと長い間掛け軸を眺めてきた俺だけど、一度だってそんな幽霊を視た覚えなどないぞ。  こいつら、出鱈目言ってないか……? 「何でも、この掛け軸が大好きで仕方なくて命を亡くした男で、亡くしてからもずっと、幽霊になってずっと、掛け軸の前に立って眺めてるんだとよ。そんで、自分を差し置いて掛け軸を眺めにくる連中を、嫉妬のあまり呪い殺すんだとか」 「……え? じゃあ、俺らヤバいじゃん」  ……そうか。じゃあ……この連中が言っている事は本当だ。  ずっと記憶がきえてく。  今までそう思っていた。  でも、思い出した。  なら、俺のやる事は一つ……だよな?
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