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「いないよ。てか、怖い事言うなよ。怖いだろ」
「ははっ。別に驚かせたい訳じゃねぇってば」
二人連れの男だ。
上手く隠れたつもりだったのだが、少し見られてしまったのだろうか?
気配を悟られそうになったら嫌なので、二人には早いとこ帰って欲しいのだが……。
「……掛け軸は普通だな」
「あれ? お前知らねーの? この幽霊屋敷で怖いのは掛け軸じゃねーよ。掛け軸の前に立つ、男の幽霊の方」
……何だと……? 掛け軸の前に立つ男の幽霊……? ずっと長い間掛け軸を眺めてきた俺だけど、一度だってそんな幽霊を視た覚えなどないぞ。
こいつら、出鱈目言ってないか……?
「何でも、この掛け軸が大好きで仕方なくて命を亡くした男で、亡くしてからもずっと、幽霊になってずっと、掛け軸の前に立って眺めてるんだとよ。そんで、自分を差し置いて掛け軸を眺めにくる連中を、嫉妬のあまり呪い殺すんだとか」
「……え? じゃあ、俺らヤバいじゃん」
……そうか。じゃあ……この連中が言っている事は本当だ。
ずっと記憶がきえてく。
今までそう思っていた。
でも、思い出した。
なら、俺のやる事は一つ……だよな?
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