雪の匂い

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 小さく頷いた和海さんに微笑み返すと、さらにそのお返しと言わんばかりにキスをされる。 そして、 「んっ!!……っあ、……っ!」 ゆっくりと僕を侵食する熱。 欠けているところを一分の隙間も許さずに埋めてくれる、僕だけの熱。 「すき……。」 無意識のうちに口から出ていた言葉にはっとすると、僕よりもさらに驚いた顔をする和海さんと目が合った。 僕たちは無言で二秒ばかり見つめ合ったあと、どちらからともなく笑い出す。 「和海さんたら変な顔。」 「お前も大概だぞ。」 「じゃあ二人して変な顔ですね。」 「そうだな。」 「……やっぱり、指輪贈ってもいいですか?」 「いいぞ。お前と揃いのを作らせよう。ちなみにそれ、うちの会社の宝飾部に作らせた。」 「わあ、職権乱用もいいところですね。」 「ちゃんと金は払った。」 「とんだ自己消費自己還元じゃありませんか。でも僕も宝飾部に頼みます。多少無理が通るでしょうから。」 「そんなに変わったデザインにするのか?」 「いえ……あの、指じゃなくて、チェーンをつけて首飾りのようにしてほしいんです。」 「それじゃ指輪じゃないだろう。」 「いいんです。だってほら、そうして首にかけた方がここに近いでしょう?」 とん、和海さんの胸の真ん中をつつくと、和海さんは首を傾げる。 「ここって、心臓のことか?」 「そうです。」 「お前は……時々物騒なことを言うな。」 「え?い、今の物騒でした?」 「ああ。大層熱烈で、それでいて物騒だ。さて、話をしているうちに慣れたようだな。」 「あ……。」 そうだった そういえばこれ入れっぱなしだった…… 慣れって怖いなぁ…… 入れられた状態で普通にお喋りしてたよ………… 「慣れたのならもう少し奥まで進めるぞ。」 「あ、あの、ゆっくりしてくださいね?」 「ああ、分かってる。」 汗で濡れた前髪をかきあげながら、和海さんはゆっくりと腰を進める。 「う、あっ、あ!」 いきなり奥まで突っ込まれるのも辛いけれど、じわじわとこじ開けられるのもなかなか辛い。 ゆっくりなぶん感覚ばかりが鋭くなるからだ。
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