しおりの記憶

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「小嶺<コミネ>さん、これ、交換しよう?」  小学4年生の3学期に、2分の1成人式で、記念にと行った紙漉き<かみすき>体験。  それで作った栞を交換しようと言ってきた、クラスメイトの斎藤匠志<サイトウタクシ>くん。  見た目、凄く細くて小さくて、今にも折れそうな腕や足。  私との接点といえば、1ヶ月に1回くらい回ってくる日直が同じだということ。 「えー私、もう自分の名前書いちゃったよ……」 「僕も書いたよ。  それでさ、10年後の成人式にまた交換しよう  よ。」 「え?でも、なんで?」 「それは、10年後に教える。  じゃあ、約束ねー。」  ニカッと笑って、私の栞を奪い取って、斎藤くんは彼のそれを私に押し付けた。  一方的な約束。  私は、いいよ、なんて言ってないのに。
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