しおりの記憶

7/11
前へ
/11ページ
次へ
「斎藤……くん……」  そこには、栞を交換した時に見せた、ニカッと笑う斎藤くんが居て、私を見つけてくれたことを思うと顔がだんだんと熱くなってきた。 「良かった!化粧してるから一瞬違ったかなって思ったんだけど、人違いじゃなくて……  下向いてたけど、気分でも悪い?」  ううん、と私は顔をゆっくりと横に振った。 「あ、斎藤くん、凄いね。成人代表なんて…」  私はまた俯いてしまった。 「そっかなぁ?へへっ。  うん、ちょっと緊張したけどね。  ねぇ、それよりさ……4年生の時の……覚えて  る?」  隣の席に座った彼は私の顔を覗いてくる。  何の事を言っているのかは、もちろんすぐに解った。  私は、うん、とだけ頷いてバッグから栞を取り出した。  10年間、ずっと大切に持っていた彼の栞。  時々取り出しては眺めていたけど、当時の綺麗なまま。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加