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「斎藤……くん……」
そこには、栞を交換した時に見せた、ニカッと笑う斎藤くんが居て、私を見つけてくれたことを思うと顔がだんだんと熱くなってきた。
「良かった!化粧してるから一瞬違ったかなって思ったんだけど、人違いじゃなくて……
下向いてたけど、気分でも悪い?」
ううん、と私は顔をゆっくりと横に振った。
「あ、斎藤くん、凄いね。成人代表なんて…」
私はまた俯いてしまった。
「そっかなぁ?へへっ。
うん、ちょっと緊張したけどね。
ねぇ、それよりさ……4年生の時の……覚えて
る?」
隣の席に座った彼は私の顔を覗いてくる。
何の事を言っているのかは、もちろんすぐに解った。
私は、うん、とだけ頷いてバッグから栞を取り出した。
10年間、ずっと大切に持っていた彼の栞。
時々取り出しては眺めていたけど、当時の綺麗なまま。
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