ただ、パパを驚かせたかっただけなのに――

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「お前、その振袖どうした!?」 「パパ? どしたの血相変えて?」 「なんてこった! 早くそれを脱げ!」 「何よ、やぶからぼうに」 「なんでお前がそれを!」 「蔵の大掃除をしてたら出てきたから――」 「バカ! それは、人を喰う着物だ。昔この村で大量殺人があったことは知ってるだろ?」 「いきなり何――」 「いいから聞け! 犯人は若い女だった。その着物を着た直後、気が触れたように暴れまわって、一晩で二十人もかみ殺してしまったんだ!」 「ちょっとやだ、からかわないで」 「俺の祖父さんが命がけで着物を女から剥ぎ取ったんだが、呪いが強すぎて処分することもできず、長い間蔵に封じてたんだ」 「からかわないでってば……マジ怖いよパパ、やめて……」 「からかってなんかない、全て本当の話だ。でもよかった、まだ気が触れる前で。さあ、早くそれを脱ぎなさ――」 「からかわないでって言ってるでしょおがぁあ――!!」
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