第五章 悠紀

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  「まずいですよっ、葛西さんっ」 「あー、あの銃がなあ」  縛られたままの二人は『人』という字のようにお互いが頭で寄り添いあって座っていた。  迷ったあとで、おい、東堂! と葛西は声を張り上げる。 「お前、研究者としてどうとか言っているが、ほんとは単に悠紀が好きなんだろう!?」  東堂は訝しげな顔でこちらを見る。 「お前がそいつに執着すんのも、どうしても勝ちたいと思うのも、単にそいつに気があるからだ!」 「……馬鹿なことを言うな」  宿敵悠紀に気があると言われ、低く言い返した東堂の声は怒りに震えていた。  またもプライドが傷つけられたからなのか。  それとも、それが真実だからなのか。  尚も煽るように葛西は言う。 「なんだお前、自分で気づいてなかったのか? やれやれ、これだからエリートは」
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