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「まずいですよっ、葛西さんっ」
「あー、あの銃がなあ」
縛られたままの二人は『人』という字のようにお互いが頭で寄り添いあって座っていた。
迷ったあとで、おい、東堂! と葛西は声を張り上げる。
「お前、研究者としてどうとか言っているが、ほんとは単に悠紀が好きなんだろう!?」
東堂は訝しげな顔でこちらを見る。
「お前がそいつに執着すんのも、どうしても勝ちたいと思うのも、単にそいつに気があるからだ!」
「……馬鹿なことを言うな」
宿敵悠紀に気があると言われ、低く言い返した東堂の声は怒りに震えていた。
またもプライドが傷つけられたからなのか。
それとも、それが真実だからなのか。
尚も煽るように葛西は言う。
「なんだお前、自分で気づいてなかったのか? やれやれ、これだからエリートは」
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