第一章 目覚め

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 エレベーターは危険なので、中庭の爆風を浴びてガラスの片の飛び散った階段を上がる。  二階がエジプト展の会場になっていた。此処にホルスの眼とEARTHがある。  天井から、黄金の棺がアップで刷られた巨大ロールスクリーンが斜めにかけられていた。  葛西はそれを見上げ、此処だけ静かだな、と呟いた。  ただ、静かというのは、壊れていなかった展示品から受ける印象で、実際には、無線からの指示が途切れたらしい警備員と警官たちが右往左往していたのだが。 「おい、大丈夫か?」 と呼びかけた葛西に、葛西さんっ、と彼らは縋るようにやってくる。  こういうとき、野生に近い葛西が一番頼りになると、みんな本能で知っているようだった。
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