第一章 目覚め

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 ちょっと葛西さん、と伊集院が咎めるように言う。 「悠紀ちゃんはそんなことしませんよ」  きっぱりと言い切った彼に、なんでだ? と葛西が訊く。  確かに、悠紀自身でさえ、自分のことなどわからないのに何故、と思って身を乗り出すと、伊集院は照れたように頭を掻いて、 「だってこんなに可愛いのに」 と腰が砕けるようなことを言った。  黙って相棒を見つめていた葛西は、 「……さて、戻るか」 と棒読みに呟いた。
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