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軽くノックをすると、どうぞ、という声がすぐにした。
柔らかそうな白みがかった髭を蓄えた白衣の男が、こちらを見ると、少し垂れ気味の目許を更に和らげる。
「やあ、悠紀ちゃん、調子はどう?」
院長の本橋卓弥だ。
記憶をなくした悠紀のために、寝巻きや衣服まで買い与えてくれたのは彼だ。
海外に住む娘夫婦が滅多に帰ってこないので淋しいのだと言っていた。
「いろいろありがとうございました」
彼の立つ書棚の前まで行き、頭を下げると、
「よく似合うよ、そのワンピース」
と既に着替えていた仕立てのいい白いワンピースに目を細める。
「今、何を見てらしたんですか?」
自分が入ってきたとき、院長がデスクの上に写真立てを伏せたのに気づいてた。
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