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白い砂混じりの道に悠紀は立っていた。
その横、防波堤の向こうには、波がすべて別々の光を放っているのではないかと思うほど眩しい夏の海が広がっている。
「おい、聞いてんのか、てめえはっ」
葛西の怒鳴り声が、遠慮会釈なく耳の側でした。
「あれが横浜国立博物館、通称横浜館だ」
葛西が斜め前にある煉瓦造りの洋風建築を示した。それを眩しそうに見上げながら伊集院が言う。
「北館は一階と最上階が……ああ、最上階へ続く隅の階段も焼け残ってるんですねえ。
ほとんど壁なくて剥き出しですけど」
「眺めいいぞ、上がってみるか?」
と葛西は冗談のように、にやりと嗤う。
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