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「こわいー、こわいよー」
悠紀は時折しゃがみ込み、煤のついた階段で動かなくなる。
「ああっ、スカートが汚れるっ」
「じゃあ、しゃがむなよ」
仕方なく立ち止まった葛西が悠紀の片手を掴み、引っ張ろうとするので、いやいやするように首を振った。
「ひーとごーろしーっ」
「てめえだろが! 上から辺りを見渡してみたいって言ったのはっ!」
だから止めましょうって言ったじゃないですか、と今更言ってもしょうがないことを、やはりへっぴり腰で遅れて付いて来ている伊集院が言った。
非常階段でもないのに、吹きっさらしになってしまっている階段は、充分な幅があるとはいっても、既に手すりもなく、コンクリートも剥げかけていて、恐怖を煽るに充分だった。
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