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「おおそうだ、これがお前が入っていた棺だ」
と葛西はご機嫌のまま手招きする。
そこには黄金の装飾を施された人型の木棺が横たえられていた。だが、その蓋には無残な亀裂が数箇所入っている。
「無茶しますよね~、葛西さん」
こりゃ弁償じゃ済まないんじゃないかと他人事ながら青くなる。
「人命救助だろ?
ガタガタ言ってたからさ。
死にかけた人間とかが入ってたら、やばいだろうと思ってな」
「普通、死んだ人間が入ってるもんなんですけどね……これ」
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中のミイラは隣のガラスケースに展示してあった。それを見ながら悠紀は呟くように言う。
「ミイラって― 呪いだと思いません?
永遠に縛り付けられる呪い。
古代エジプトの人は、甦るためにミイラを残したっていうけど、前の身体があったら、その魂は何処にも転生できないような気がする」
「何が転生だよ。人は死んだらそれで終わりだ」
素っ気無いその言葉に、妙な清々しささえ感じて、葛西さんらしいですね、と笑った。
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