第1章

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携帯の画面に映っていたのは着信メールを伝えるアイコンの点滅だった。 「お母さん!」 年賀状を取りに玄関へ出た娘が表から叫んでいた。 「何よ、大きな声を出して!」 携帯はそのままにして、私は表に急いだ。 「どうしたの?」 「置いてあった!」 「でもどうして? だれが置いたのよ?」 小学二年生になる娘は大きなクリクリとした瞳が可愛い。 細い目の夫も私に似ていると言う。 「分からないよ。だって置いてあったんだもん」 「何処によ……」 娘の身体には大き過ぎる花束を私は預かった。 「ココ」 「うん、分かるけど」 花束を見つけた場所は、玄関の脇、外からでも置けそうな場所だった。 「サンタさんじゃないの?」 「今ごろ?」 私を見上げる娘の顔、それは紛れもなくあの人のそれだった。 「道に迷ったとか?」 「かもね」 「お母さんの誕生日だからじゃない?」 「かもね」 花束には私が好きな赤いバラが沢山ある。 「でも誰なのかな?」 「誰だろうね」 娘と家に戻り、夫が何事かと二人を見ていた。 「あけましておめでとうございます」 「お父さん、おめでとうございます」 私はこの人を選んだ。 夢ではなく、平凡な幸せを。 だから届いたメールもあて先に見覚えがなかったから、開かずに捨てた。 でもありがとう。そしておめでとう。 でももうあの頃には戻れない。
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