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「真之君、誕生日おめでとう!」
俺は一瞬意識が飛ぶような感覚を味わった。自分の誕生日なんて祝ってもらったのはいつぶりだろうか。
「びっくりした?」
満面の笑みの渚が照れ臭そうに俺の前でくねくねしている。俺の中でこの人の笑顔は苦手なものだった。好きでもないのになんでこんなに笑顔を見せられらるのか、不思議だった。
――なんとなくわかった。
「ありがと。渚」
渚はびっくりした表情になったかと思うと、目に涙を薄っすらと浮かべながら柔らかな笑みへと変わる。
「どういたしまして。やっと笑ってくれたね」
いつまでも法律だからだと、好きでもないのにと腐っていたのは俺だけだったようだ。
変かもしれない。でも、俺はこの笑顔に初めて安心感を貰った。好きかどうかは分からないが、渚の近くに居てみたいと思った。もっと渚の事を知りたいと思った。
「また難しい事考えてるね?」
気がつくと、渚の意地の悪そうな顔が目の前にあった。
「大丈夫! 真之君が私を離したくないってくらい好きにさせてみせるよ」
照れくさいなら言わなければ良いのに、言い終わると恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。なんとなく、気持ちは分かる喉元までどうしても込上げて来るものがある。それはどうにも止められなさそうだ……
「可愛い、ね」
渚はキョトンとしていたけど、俺の顔は赤いのだろうか。物凄く熱い。すると、俺の胸に渚が頭を乗せてきた。
「私は真之が大好きです」
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