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<航目線>
イタリア・ミラノ。
夏のバカンスが終わると、この街も人も、少しずついつもの喧騒を取り戻していく。
トラットリア・アルカーデのテーブル席で、俺はさっきから斉藤に捕まっていた。
「俺をおいてさっさとミラノに帰ったのは、そういうわけですか」
からかうみたいに言って、斉藤はゆるく煙草の煙を吐いた。
その揺れた煙の向こうで、誰かに呼ばれて振り返る、凪ちゃんの笑顔が見えた。
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