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1.宇宙(そら)
右のポケットにカギと財布。左のポケットに新品のスマホ。
ジーンズの上から手を添えて、その二か所の存在を改めて確認すると、宇宙の胸に「ここに来た」という実感がじわじわとわいてきた。
部屋のドアをパタンと閉めると、持ってきた大きな荷物をカーペットの床にそっと置いた。これからの希望に目を潤ませ、今日からの住まいであるこの部屋を見渡す。
「すっげー。飛行機」
まず目に付いたそれは、机の上に忘れ物のように置いてあった。紙飛行機、と一言では片づけられないほど精巧に作られた折り紙の作品。旅客機というよりも、シャープなデルタ型の翼をした戦闘機だ。
白地に青のラインと日の丸。航空自衛隊のブルーインパルスによく似ている。そっと手を伸ばしてつまみ上げると、機体の腹から小さな垂れ幕が下がった。
“Welcome”
その文字に目を細める。一瞬にして子どものような気持ちになり、「ぶーん」と控えめな音量の騒音を口にしながら機体を空間に流した。“Welcome”と書かれた小さな垂れ幕が、目の前でくるくると回転しながら揺らめく。この家のオーナーに会ったら、お礼を言おうと心に留めた。
紙飛行機を机の上に戻すと、机の横の白い壁に貼ってあるイケメン俳優のポスターと目が合った。
「リョウ。カッコ良いなあ」
これは、前に住んでいた人の置き土産だろうと推測する。
「サイン……直筆?」
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