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鼻先を突っ込むようにイケメン俳優の襟元を見つめ、意味もなく触ってみた。
この部屋は六畳の洋間で、部屋には机もベッドもある。クローゼットはビルトインで、入居者募集の宣伝文句は、家具付き格安ワンルーム。ワンルームと言っても、シェアハウスという形態なので、部屋以外のスペースは共用。それが格安の理由だ。
大学進学のため、宇宙は地方の実家を出て東京にやってきた。新生活を始めるにあたり、家具付きで格安なこのシェアハウスを見つけたのは、数ある物件の中から掘り出し物を引き当てたようなものだった。
クローゼットの横に、前もって宅配便で送っていた布団類が届いていた。早速紐を解いてベッドメイキングに取り掛かる。
「俺の部屋っぽくなってきたかな」
仕上がりに満足して、腰を降ろした。ベッドはシングルではなく、ダブルサイズ。部屋の面積をだいぶ取っているが、日々の生活に睡眠は大事。マットレスは好みにドンピシャなふかふか具合で、よく眠れそうだ。
窓に目を向けると、レースのカーテンの向こうに澄み渡る青い空が見えた。ブルーインパルスのデルタループが見えたのはきっと気のせい。
時間はまだ昼過ぎ。宇宙はシェアメイトの誰とも会うことなくこの部屋に入った。家具を運び込むこともない、静かであっけない入居だった。
「赤くなかったな」
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