1.宇宙(そら)

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 そんな自分サイドのみの勝手な見た目の判断が頭を巡る。だが、割とすぐに冷静さを取り戻した。外国人のシェアメイトに少し緊張しすぎているのかもしれない。外国人が「俺」を自然に使うことにも。結局、あまり突っ込まないことにした。 「そうですか。よろしくお願いします」  そう言って再びぺこりと頭を下げた。すると、自分が今空腹なのだという事を思い出した。ジーンズのポケットにある財布と鍵の所在を再度確認する。そして、今日は入居したばかりで勝手もわからないし、晩御飯はコンビニで何か買おう、という安易な考えに向かった。 「ムーカイさん、俺今から買い物に行くんで、また」 「そうなんだ。買い物から帰ったら、晩メシ一緒に食おうよ」  ムーカイは流暢な日本語を披露し、まだまだ宇宙と話しをしたそうな表情を見せる。だがそんなムーカイに、宇宙は「じゃ」と笑顔で手を振りキッチンを後にした。初対面で爽やかな印象を残せたかどうかはわからなかった。 「あ、ムーカイが、どこの国の出身なのかを聞き忘れた」  玄関で靴を履くときにふと思った。定番の質問。聞くべきことを聞き忘れるのは初対面のあるある。まあ、そんなことはまた後で聞けば良い。宇宙は重厚な玄関のドアを開けた。空を見上げると、春の月が朧げに夜の空間を照らしていた。
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