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「つまり、あなたは眠っていても常に脳細胞の一部が覚めた状態にあり、その覚めたままの状態で自分の夢の中に入って行けるって事ですか?」私は確かめる様に改めて訊き直した
黙って聞き続けるには話が突飛過ぎるのだ。
「結論はそう言うことになります」久葉野氏は応える「但し、最初の裡は夢の途中でこれは夢だって気づく程度のものでした。今のレベルに達する迄にはそれなりの努力もしております」
「今のレベルとは?」
「夢の操作も若干なら出来る様になりました」
その時、急に酔いが回ったみたいで、私は久葉野氏の夢談義にそれ以上着いて行けなくなった。
「タルちゃん、飲み過ぎたんじゃないの?」
ふと声の方を見上げると店の主人がカウンターの中から私を見て笑っている。
「タルちゃん、タルちゃんって誰だ?」私が主人に訊く
すると「樽島さん、あなたの事ですよ」と横の方から声が聞こえて来た
見れば久葉野氏である。
「さあ、しっかりして下さいよ」久葉野氏は言う「私の楽しみなんだから」
「楽しみ?」私は思わず問い返す
「大丈夫ですか?いきなりの夢談義は刺激が強過ぎたかも知れませんね」
「刺激が強過ぎるって何のことですか?」
私は久葉野氏に問い掛けながらも、自分の意識が朦朧として行くのが分かった。
「では論より証拠と言うことで」久葉野氏はそう言うと1冊の古いノートをカウンターの上に置いて見せた。
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