第1章

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約束をした。10年以上前の約束。その頃は彼女がいて、俺は幸せだった。自分から告白したからこそ嬉しかったのだ。だが、 「次に会うときは私から告白するからね」 転校する前日に付き合っていた彼女から言われた言葉だ。それ以来、彼女とは音信不通。恋人関係も自然消滅していた。でも、それでも忘れられなくて、俺は好きな人も作らないまま社会人になっていた。 結婚やリア充?縁のない話と、諦めてしまいながらも君の事を思い出す。そして、休日に独りでカフェのコーヒーを飲むのだ。飲み終わると精算をして店を出る。 「あの、」 後ろから声をかけられる。振り向くと、突然キスをされた。人前で、知らない人に、急に、すべての理由から体が凍りついたように固まった。目の前には髪の長い、白のワンピースを着た女性が立っていた。一目でわかった。約束をした彼女だと。そして、俺は今までの思いの丈をぶつけようとした。が、それは二度目のキスで遮られた。赤い顔で驚いていると、 「約束したよね。今度は私から告白するからねって。だから、付き合ってください。」 彼女も真っ赤な顔をしたまま俺に言った。俺は、彼女の告白を抱き締める形で承諾した。これが、約束。
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