一章・どうしよう

7/7
前へ
/77ページ
次へ
「さて……先に外へ行っていて下さい、私は会計を済ましてきますので」   「あぁ頼むわ、こいつと待ってるからよ」   『白』は悠然と立ち上がり、帽子を整えて真っ白な本を片手に店内へと消えていった 『黒』は飄々とした態度で返事を返し、立ち上がる 赤子の手を導くように僕へとその手を差し伸べながら   「……?」   「ほら行くぞ?さっさと出とかねぇとアイツ1人で行っちまうし」   なー行こー?と子供のような態度で僕の袖を掴み引っ張る、案外強めに   「……僕、帰りますッ」   これ以上一緒に居たら危ない、そんな本能のような……直感のようなものが僕に早く逃げろと騒ぐ だから、僕は目も合わせずにとにかく逃げようと試みた   何となく、無駄に終わるとは予測出来たけど       「……いい加減、飽きてんだろ?」       真っ直ぐで一切の屈託のない、酷く無邪気な笑み 僕自身の何もかもを見透かすような静かな物言い   確かに、僕は飽きていた   この何も起きない僕自身の人生に   だからと言って薬や暴力的な事にわざわざ自分から首を突っ込もうとは思わなかった この平和な今を壊す気にはなれなかった     そんな勇気なんて僕には無いから 僕に世界を変えるような力は、蚊ほどにも無いから     「チキン!!行くぞ」   「あ……」   今度は思っていたよりも弱く引かれ、僕は『黒』の後をついて行った         僕は生まれて初めて、こんなよく分からない……一寸の先すら見えやしない不安定なモノに首を突っ込んでみようという気になったみたいだった      
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加