不透明人間

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頭が回らない。夢の中にいた時の方が余程冴えていた。この気怠さはなんだ。暑苦しい。熱でもあるのだろうか。 掛け布団をはね除けたが、布団は自動的に元の位置に戻った。 いや違う。自動的に布団が動く訳が無い。きっと誰かが隣に居るのだ。 辺りを見回す。青色の猫の人形は無いようだ。 「……姉貴か」 「よくわかったね。話は聞いてるよ」 話とは、人の姿が見えないという話だろうか。妹が伝えたのだろう。 「そうか……。で、なんで姉貴がここに居るんだ?」 「アンタがうなされていたのをあの子が聞いてね。凄い熱だったから、あの子と私で看病してたんだ」 淡々と、でもその言葉は炎のように熱かった。 「そっか……。優しいんだな」 昨日、俺たちは喧嘩をした。仲違いをしていた。それにもかかわらず、姉は俺の面倒を見てくれたのだ。 「それが家族ってもんだろ」 姉の言う家族は、単なる肩書きではなく、もっと中身の事なのだと、今の俺には容易く理解できた。 「お兄ちゃん!大丈夫?」 勢いよく扉が開き、妹が入室してきた。妹もまた、俺を看てくれていたのだ。 そう言えば、面倒を見てもらってばかりだったのにも関わらず、あの言葉を一回も言った事が無かったかもしれない。いや、咄嗟に言った事くらいはあるのかも知れないが、実質的に、言った事は無かった。 だからこそ、今こそ、この気持ちを伝えたいのだ。 「二人とも、ありがとうな」
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