不透明人間

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「……お兄ちゃん、私は変態じゃないからね」 「とにかく、人が着ていない服は見えるみたいだな」 「とにかくで済まさないで!」 とにかくで済ましてあげたほうが、妹の為だと思ったのだが。それに美少女で妹で、尚且つ変態とか、素晴らしいじゃないか。しかしながら、これ以上妹を変態いじりするのは居たたまれないので、話題を変えよう。『変態いじり』……良い響きだ。 「そう言えば、見えている車があったな。駐車場に停められている車だ。それも人が乗っていないから見えていたのかもしれないな」 「……そうかもね。人と接触すると見えなくなるのかな?机の上にあるシャーペンは見える?」 俺の部屋には、小学校に進学するときに買って貰った勉強机が置きっ放しになっている。その机の上には、シャープペンシル、消しゴム、ノートが散らばっていた。 「見えるぞ」 「じゃあこうすると?」 俺の見つめた先にあったシャープペンシルは、空中に浮かんで静止した。 「すげぇ!ハリーポッターを観ている気分だ!」 「これも見えるんだね……。つまり、『人』と『人を覆っている物』が見えないんじゃないかな?」 『人を覆っている物』。その結論は、何か破綻しているような気がする。この家や先ほど訪れた病院は、人間を覆っているが、視認できた。 密着度が違いすぎるからか?服や車は、建物に比べると密着度が高い。それが原因なのかもしれない。 しかし何かが引っかかる。でもその何かが掴めない。
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