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血。
僕らを縛るこの血。一体なんだというのだろうか。
僕たちの家、御剣家は代々この古都京都を陰で守ってきた一族だ。
僕らを縛るこの血は何なのだろう―――。
初代高天の血など、僕らには蚊ほども通ってはいないだろうに。
その時、唐突に声が聞こえた。
“知っておろう。これは呪いだ。”
「え?」
「「うん?」」
耳元で誰かにそういわれたような気がして慌てて顔を上げるが、視界に入るのは爺様と爽矢さんのふたりだけだった。
「今、どっちか何か言いました。」
「いや、なんも言ってねえけど?」
「どうした?居眠りか?」
居眠り?していたのだろうか?いやそんなことはないはずだ。じゃあ誰が?
ためしにもう一度耳を澄ませてみるも、もう何も聞こえない。
空耳?それにしては随分はっきりと聞こえた。
女の人の声だった――。知らない人の声。
僕はこの声を、どうしてか忘れることができなかった。
この声の正体――僕がそれを知るのはずっと先のことになる。
すっとずっと、先のこと。
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