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自室にこもった僕は、そっと本棚から一冊の本をとる。
そしてぱらぱらとページをめくってその文章に目をやる。
何度も、何度も読み返す。彼女の言葉。
紅緒さんの日記の最後のページに残された言葉。
僕は、その文章を指でなぞる。自室の机について紅緒さんの日記を読み返す。
最後まで読むと、そこからわかるのは、この日記を書いた紅緒さんが、家族を愛していたということ、そして悩みあぐねた挙句に、その家族を守るために、菊端の力を使うことを決めたこと。
10ページほど前に、日記を遡る。そのページは、それまでの整った文字と異なり、粗雑に殴り書きされたようになっている。
そこにはただ何度も、ボールペンでこう書かれていた。
「どうして」
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