第五幕

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 ただ、なぜそれを読んだ健が、菊端になるといったのかは分からない――。  僕にとって、この日記はまるで小説のようだった。感動はできても、影響されて重大な結論をなすほどじゃあない。 「健。健はどうして…あれを読んで菊端の話を受けたんだ?」 「…。」  健は僕の問いかけに、少し眉根に皺をよせ考え込むそぶりを見せた。 「そうだな…。俺にもわかる気がしたから、っていうのもある。俺も兄貴にコンプレックス、ないわけじゃないし―― でもそれ以上に、なんか。こう…。」  煮え切らない回答に少し苛立った。すると健はこちらをちらりと見て、何か逡巡するような素振りをみせた。 「言っても笑わない?」 「何を?」 「いやさあ…。 うん、まあ…夢を。」 「夢?」 「夢を見たんだ…。」 「どんな?」 「…。」  健は言うか言わまいかしばらく迷った後、ゆっくりと話し出した。
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