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ただ、なぜそれを読んだ健が、菊端になるといったのかは分からない――。
僕にとって、この日記はまるで小説のようだった。感動はできても、影響されて重大な結論をなすほどじゃあない。
「健。健はどうして…あれを読んで菊端の話を受けたんだ?」
「…。」
健は僕の問いかけに、少し眉根に皺をよせ考え込むそぶりを見せた。
「そうだな…。俺にもわかる気がしたから、っていうのもある。俺も兄貴にコンプレックス、ないわけじゃないし――
でもそれ以上に、なんか。こう…。」
煮え切らない回答に少し苛立った。すると健はこちらをちらりと見て、何か逡巡するような素振りをみせた。
「言っても笑わない?」
「何を?」
「いやさあ…。
うん、まあ…夢を。」
「夢?」
「夢を見たんだ…。」
「どんな?」
「…。」
健は言うか言わまいかしばらく迷った後、ゆっくりと話し出した。
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