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「あの日、あの京太郎さんって言う人に会った日。夢を見た。」
「どんな?」
「…。兎が。」
「兎?」
「そう、兎。白い兎がこっちを見てる夢。」
兎が出てくる夢?それが一体なんだというのか。
「その兎がこっちに語りかけてくるんだ。
そしてその兎の後ろに女の人がいるんだ。
で、兎を持つよう俺に促すんだ。
俺はそいつを持ち上げるんだけど、そうすると兎がこっちに話しかけるんだ。」
「なんて?」
「”愚かな人の子の末裔よ。耳を澄ませ。聞こえるであろう、来訪者の足音だ。”」
「来訪者?」
「うん。」
「それで?」
「それだけだよ。それで目が覚めた。不思議な夢だったなって、起きた時はぼんやり思ったんだけど、その日から、なんていうか…。菊端ってやつになることへの抵抗感がなくなったていうか。」
「…はあ?」
思わずそんな声がでた。なんだそれは。そんなファンタジーな展開。
「それで…。返事したのか?菊端になるって…。」
「…。」
何だそれ…?
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