第五幕

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「あの日、あの京太郎さんって言う人に会った日。夢を見た。」     「どんな?」 「…。兎が。」 「兎?」 「そう、兎。白い兎がこっちを見てる夢。」  兎が出てくる夢?それが一体なんだというのか。 「その兎がこっちに語りかけてくるんだ。 そしてその兎の後ろに女の人がいるんだ。 で、兎を持つよう俺に促すんだ。 俺はそいつを持ち上げるんだけど、そうすると兎がこっちに話しかけるんだ。」 「なんて?」 「”愚かな人の子の末裔よ。耳を澄ませ。聞こえるであろう、来訪者の足音だ。”」 「来訪者?」 「うん。」 「それで?」 「それだけだよ。それで目が覚めた。不思議な夢だったなって、起きた時はぼんやり思ったんだけど、その日から、なんていうか…。菊端ってやつになることへの抵抗感がなくなったていうか。」 「…はあ?」  思わずそんな声がでた。なんだそれは。そんなファンタジーな展開。 「それで…。返事したのか?菊端になるって…。」 「…。」  何だそれ…?
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