331人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「俺にも分からないんだ。でも。」
健は、ゆっくりと言葉を選びながら話を続けた。
「あの、夢で出てきた兎。兎の後ろにいた女の人が、その、高兄は変に思うかもだけど…。
きっとあの女の人が、紅緒さんだって、思った。」
何故そう思ったのか。そう聞きたかったが、なんとなく聞いてはいけない気がして、健の次の言葉を待った。
「そんで、変な話だけど、あの白兎がさ、菊端って言われるものだったんじゃないかって。そう思った。
だって、その日から―-本当に不思議なくらい、何も感じなくなったんだから。不思議なくらいに、すとんと落ち着いたっていうか…。」
そう話す健に、健の横顔に寒気が走った。
なんだそれ――。なんだそれは。
最初のコメントを投稿しよう!