第五幕

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「俺にも分からないんだ。でも。」  健は、ゆっくりと言葉を選びながら話を続けた。 「あの、夢で出てきた兎。兎の後ろにいた女の人が、その、高兄は変に思うかもだけど…。 きっとあの女の人が、紅緒さんだって、思った。」  何故そう思ったのか。そう聞きたかったが、なんとなく聞いてはいけない気がして、健の次の言葉を待った。 「そんで、変な話だけど、あの白兎がさ、菊端って言われるものだったんじゃないかって。そう思った。 だって、その日から―-本当に不思議なくらい、何も感じなくなったんだから。不思議なくらいに、すとんと落ち着いたっていうか…。」  そう話す健に、健の横顔に寒気が走った。  なんだそれ――。なんだそれは。
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