第五幕

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「でも、具体的にさ。菊端ってなにするんだろう?」  そう質問してくる健に、僕は適当な答えを渡すことができなかった。  そして視線を下に向けて短く 「…さあ。」    とだけ答える。その様子に、健は少し呆れたように溜息を吐いた。 「なんだよ、高兄も知らないのか?」  確かに、僕は何もしらない。知っているのは御剣家の始まり、そして哨戒士の存在ぐらいだ。 「…。」  もっと、ちゃんと知らないといけないのかもしれない。  姑獲鳥とは何かということを。そして今までの戦いを。  そのためにはもっとあの二人――爺様と爽矢さんと話をしなくてはならない。ただ、あの二人は哨戒士を先に集めようとするばかりだ――。詳しい話を聞く機会がない。でも聞かなくては。話を聞かなくては。     ――――――――  ―――― 「我らが女王が目覚める――。そのための準備をしなくてはいけない。」  その言葉に、濃色の肌を持つ男は鷹揚に頷いた。 「わかっている、我らの聖母(マリア)救世主(メシア)をこの世に誕生させるためだ。それを妨げる悪魔(サタン)の使いは殺さなければ――。」 「あまり暴走するなよ。あの馬鹿がすでにやらかしている。」 「ふん。あのものは使徒にふさわしくないと最初から言っただろう?貴方の判断ミスだ。」 「仕方あるまい。あの方がそれを望まれたのだから。女王の言葉は絶対だ――。」 「気まぐれで、あのような下賤のものを使徒に迎え入れるとは――。」 「文句を言うな。そのようなことに意味はない。少なくとも同じ敵を相手にし、そこに凄まじい情熱を持っている――。それに何より強い。それで十分だ。」  さあ行こう、鎖は解かれつつある。さあ――。
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