第六幕

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 幼いころから、我が家の存在は絶対だった。  一族の儀式、しきたり――。  それらは私たちの家では逆らえないなにかで、小さなころの私はそれを微塵も不思議に思わなかったのだ。  そして大きくなるにつれ、この家が異質だと気が付きだした。それでもなぜか、そういう一族のつながりを完全に拒絶することはできなかった。  反抗期というものは、私にもあった。親に口答えだってしたし、先生に生意気をいうことも。でも、この家の集まりとかには苛立ちなく参加していた。  おかしなことに、この家の子はみんなそうなのだ。  この家の縛りは当たり前に私たちの心の中にあり続ける。  それに気がつき、その上でその不思議な縛りを受け入れたあのときから、私は自分の中にある自分以外の存在を意識するようきなった。  否、正確には受け入れるきっかけになったあの出来事から。  あの日から、ずっと私は――誰かを待っている。  誰かは分からないけれど、その誰かが来たとき、私はもっと高く跳べる。  そんな確信があった
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