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「ねえ、聞いてるん?」
ぼんやりと半分夢の世界に足を突っ込んでいた私を、高い声が呼び戻す。
その声に、ぼんやりとしたまま顔を向けると、少し頬を膨らませた親友の奈々子がこっちを見ていた。
「聞いてへん…。」
ぼうっとしたまま正直にそう話せば、奈々子はその頬をさらに大きく膨らませた。
「もう!なんなん、最近。あんた、ぼうっとしてばっかで変やで?」
「成長期で眠いんよ。」
「あんたもう高校生や!」
呆れたように息を吐き、私の横に座る奈々子。
「それで何か用事?」
「用事って言うほどでもないねんけど…。柳原先輩とさっき話せてん!」
なるほど、最近熱を上げている先輩と何かあったらしい。かわいらしいことだ。
「さっきな、職員室いったら先輩がたごやんに頼まれごとされてはって!『先輩も大変ですね』って声かけたら。『そんなことないで』って…。ああん!かっこよすぎ!」
柳原先輩は他の女子もかっこいいと騒ぐ、軽音部の二年生だ。ちょっと童顔で優しい面差しをしているのが印象的な。
「ふーん。相変わらずのイケメン好きやね。前は他のクラスの子、かっこええ言うてなかった?」
確か、ちょっと前までは同じ学年の進学クラスにいる背の高い男子を好きだといっていたはずだ。もう心変わりしたのか。
「ああ、きょー君?うん、彼もかっこいいい。進学コースの中でも抜きんでてかしこいんやて!」
「どこがええん?あんな冷たい顔したやつ。」
名前は覚えていなかったが、顔は体育のときに奈々子が騒いで指差していたのでよく覚えている。高校一年生とは思えない、冷めた表情の男子だった。
それがクールだと一部の女子の間で騒がれているのは知っていたが、正直理解に苦しむ。
自分には普通の女子の感覚がないらしい。
しかし奈々子は鼻息荒く力説する。
「そこがええんよ!なのに彼女には優しい面差しを向けるところとか、もう最高!」
「え、あいつ彼女おるん?」
なんで彼女いるやつを追掛けるんだ…。全く理解できない。
「略奪愛はむなしいだけや。やめときや。」
「ちゃうわ、ボケ。これはあれや、アイドル見とる感覚。好きなアイドルの出てる恋愛ドラマみてどきどきする、って感じや。」
「さいですか。」
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