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誰を待っている?
誰がやってくる?
わからないけれど、きっとその人はくる。その確信だけはあった。
そんなこと、周りには言えない。奈々子には言えない。
秘密にしておかなくてはならないことだ。そんなことは高校生にもなればわかる。
そんなことを言えば、きっと変な目で見られる。
変人扱いされて陰口叩かれるのが落ちだ。
そんなことをぼんやりと考えていると、不意に奈々子がこちらを振り返った。
「で、大会はどこで、いつすんの?」
「来週、西京極。土曜日やね。」
「西京極?阪急沿線やね。ちょっと遠いか…。」
そういって顎をなでながら考え込む奈々子に溜め息が漏れる。
こいつ、ちょっと本気で見に来る気や。
ミーハーというのは困ったものだ。
しかし、こんなに男に目移りしてるのに、彼女は男女両方から人気があるのだ。不思議なことである。まあこの子の性格がいいからだろうが。
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