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試合当日になるまで、どこか悶々とした気持ちを抱えたまま、私は過ごした。
当日、奈々子は本当に西京極総合運動公園までやってきた。
「本当にきたん…。」
着替えを終え、競技場に入ると自分を呼ぶ声が下ので振り返ってみれば。応援席でこちらに向かって手を振るあの子をみて思わずげんなりした声が漏れた。
だがそんなことでへこたれないのが奈々子だ。
「なにさ、そんな言い方。かわいい親友が応援しにきてやってんねん!がんばりい!」
思わずため息が漏れたが、それと同時に変な力が抜けた気がした。
まったく不思議な子だ。
奈々子に手を振って別れを告げ、うちの学校の集合場所にもどると、同級生の男子に声をかけられる。
「三崎さん、かわいいなあ。ええなお前、あんなかわいい友達おって。」
「手だしたら殺すで。」
「こわっ!」
軽口を叩いて互いをリラックスさせる。
集合場所で、今日のスケジュールを確認し、部長と顧問の激励を受ける。
「今回はフィールド競技のみの大会や。普段トラック競技ばっかやってるやつ。自分らの本職やないからとか気を抜くな。そういうのはチームの士気にも影響する。一年。しっかり先輩の技盗めよ。」
『はい!』
「よっしゃ、円盤投げは今日一番手や。がんばって来い。後半の競技の奴は身体冷やさんようにウォーミングアップ。忘れんなよ。」
『はい!』
体育会系の歯切れの良い返事を繰り返し、一時解散になる。
エナメルバッグを抱え、みんなそれぞれ移動する。
うちの部は人の多さに対し、引率の先生が少ないので自分で判断して動かないと不戦勝になることもある。一年は先輩について行ってそれを防ぐのが慣例で、私も先輩に指示を受けながら自分の出るハイジャンプと円盤投げの競技場をチェックする。
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