第六幕

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 だめだ。集中が乱される。  ちゃんとしっかり集中して神経を研ぎ澄まさないと、失敗してしまう。  間違って跳びすぎないようにしないと。  無意識のうちに頸の後ろを掻きながらその場を移動した。    昼食後にハイジャンプの決勝がある。選手集合場所で点呼の後、競技場に入った。予選で出場競技に敗退したメンバーの何人かが見学に来ていたのが見えた。それに奈々子がこっちに向かって手を振っているのも。  簡素に反応を返し、準備に入った。しばらくして、本番が開始される。軽く飛び跳ね感覚を整える。最初、低い高さから始まる。優勝候補など、有力選手は最初はスルーだ。  私も、様子をうかがう。  その時だった。  誰かの視線を強く感じた。  ――誰かがこっちを見ている。  さっき感じたものよりずっと強く、そして――。  どこから?  どこからだ?  視線を巡らす。  すると、視界の中に、日光を浴びてキラキラ茶色く輝く髪の少年が見えた。  自分と同じくらいの年齢の男子。  彼がまっすぐこちらを見ていた。  ドクンと心臓が高鳴る。  一瞬呼吸するのを忘れ、そして次の瞬間には体中の汗腺から汗が噴き出るような感覚に襲われた。  来た。  彼だ。  彼を  待っていた。  ずっと  待っていた。
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