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『014番、1メートル60。お願いします。』
申し込んでいた通りの高さでゼッケン番号が呼ばれる。横からチームメイトがトントンと肩を押した。
いかなければ。
でも、どうして?目が離せないんだ。彼から。彼もなぜかまっすぐこちらを見つめている。なんとか足を動かす。
『1メートル60.一回目です。』
こちらが助走開始地点についたのを見てアナウンスが流れる。ふうと息を深くつき手を上げる。
「行きます。」
最初は大きくステップし、バーに近づく。
あの少年が向こう側に見えた。
小股になり、歩数を調整する。
踏込み、身体を大きくひねる。
いつもより強く踏み込んだ。
いつもより大きく身体を伸ばした。
あ。だめだ。
ちゃんと力を抑えられない。
羽が生えたみたいに身体が軽い。
浮き上がっていく。
ああ、飛んでいく。
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