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僕は唖然としてその光景を見ていた。
一人の少女が、身長だってそんなに高くはない少女が今僕の目前で大きく跳んだのだ。
走り高跳びという競技で、どれだけ人が跳べるのか、素人の僕には分からない。
でもそんな僕にだって、彼女の跳躍が異常なものだということは分かった。
他の選手は設置されたバーの少し上を跳んでいた。
でも彼女はバーの二倍以上の高さまで体を跳ばした。
判定員らしい旗を持った男性も唖然とした表情を浮かべているところから、彼女の跳躍はプロの目から見ても異常なものだとわかる。
口があんぐりと開いている僕の横で、爽矢さんが呟く。
「決まりだな。」
僕が振り返ると爽矢さんはニヤリと笑みを浮かべ
「あいつが、胡蝶だ。」
そう断言した。
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