第六幕

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 早苗さんはその後、体調不良を訴え試合を棄権した。  先輩と思しき同じユニフォームの男女に何事かを告げると、まっすぐこちらに向かってきた。 「…。」  僕の隣にいる二人には目もくれず、ただ僕を見ている。  編みこまれた黒い髪は、さっきのジャンプで乱れている。彼女はそんなこと、全く気にしていない様子だ。ゆっくりとこちらにやって来る。  そしてすぐ近くまでくるとゆっくりと口を開いた。 「貴方、誰?」  その一言が僕らの間に静かに落ちた。 「…。」  名乗るべきか少し逡巡したが、自然と口から言葉が漏れた。 「高天。」  彼女はこちらをじっと見ている。 「御剣高天――。御剣家の次期当主だよ。」  その答えを聞いて、彼女は静かに膝を折った。そしてゆっくりと言葉を紡ぐ。 「愚かな人の子の末裔よ。貴方を待っていた。」  
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