第六幕

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―――――― ――――――――――  (カラス)が飛ぶ。広い空を。その鴉は森の中に消えていく。そしてその木々の影にたたずむ二人の頭上にとまった。  二人の内、小さな影の者が口を開いた。   「哨戒士が3人揃った。」 「ええ。」 「…そろそろかな。」  もう一人はわずかに眉根に皺を寄せた。  それを背中で感じたのか、 「お前がそんな顔をする必要はない。お前に傷は負わせない。」 「そんなことを考えているのではないのです。わかっていただけないのかもしれませんが。」 「…お前は変わらないねえ。」  そういって小柄な影は薄い唇をわずかにゆがめた。  そして空を見上げ呟いた。 「高天よ。これで最後にしよう。我らの呪われし宿命(さだめ)を。」  その声は木々のざわめきに紛れてしまう――。  
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