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「待っていた。ってそういう意味だったんですね…。」
「…あれは、口から勝手に出てきただけです。でも、そうですね。そういう意味だったんかも。」
彼女は視線を落とす。
その彼女の様子を、健がじっと見つめていた。
鴉の鳴く声が夕日の差し込む部屋に大きく響いた。
その鴉の声のする方に一瞬視線を走らせ、爽矢さんが
「…胡蝶。お前は、俺たちと今後行動を共にしてもらうことになる。そして姑獲鳥との戦いに関わることになる。
それを知った上で、お前は胡蝶としてやっていく気があるのか?」
その問いかけに早苗さんは視線を落としたまましばらくじっとしていた。
数十秒ほどが経ったころ、ようやく口を開いた。
「ええ。そうしないといけないと思います。そうしなければ――。自分の中で、その哨戒士ってものになることに納得してしまっているのがわかるんです。」
「そうか…。」
それだけ言うと爽矢さんはがしがしと荒く自身の頭を掻いた。
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