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「それはもう少し余裕があると思うぞ。」
意外なことに、爽矢さんはさらりとそう返した。
「え?」
「前にも言ったが、姑獲鳥っていうのは活動と休止を繰り返す。休止期間から急に活動期に入るんじゃなく、それまでの間に微妙に…なんていうかざわつくときがあるんだ。」
「ざわつく?」
「ああ。活動期っていうのはコロニーの長、今確認できている2体の個体が完全覚醒してからのことを指すことが多い。
姑獲鳥の長は決まった周期で休眠と覚醒を繰り返すんだが、休眠から覚めて完全覚醒するまでの間にいろいろ起こるんだ。
例えば、先々代のころは過度なナショナリズムが欧米で広まった。歴史の授業で寝てたって知っているだろう?いわゆるナチス台頭やムッソリーニによる軍国主義だ。
あれほどわかりやすいとはかぎらんが、何かしらか起きることは間違いない。」
「なんで、そんな現象がおこるんです?」
健の素朴な疑問に、今度は爺様が答える。
「それはな、姑獲鳥の特殊な生態が関係してるんや。」
「特殊な生態?」
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